写し 10 ジェスチャーとアーティキュレーションと思考 

写し

 

10 ジェスチャーとアーティキュレーションと思考

 

 

まず始めにここまで私たちに付き合って下さった皆さんにお礼を述べたいと思います。すでに次のシーズンに向けて着々と準備を進めているだけでなく、その間にボーナスエピソードもお送りする予定です。

更に嬉しいことに、オリジナルのポッドキャストに新しくスペイン語、日本語講座が加わることになりました。これから半年のうちにどんどん公開していくので、どうぞお見逃しなく!

そして、今までポッドキャストをお聞きいただき、情報を活用していただいた方は、是非iTuneポッドキャストにレビューを書き込んで下さい。みなさんの貴重なご意見、ご感想が今後のプログラムの発展に役立ちますので、どうぞよろしくお願いします。一個人の感想なんてと思われるかもしれませんが、本当に一人一人の声が大切なんです。

ポッドキャストを始めて間もないこの番組にとって、レビューはリスナーの基盤を広げるために必要不可欠ですから。では前もってお礼を言っておきます。ありがとうございます。是非レビューを書き込んで下さいね。

 

 

これまで様々なことを各エピソードに分けてお話してきましたが、発声とアーティキュレーションについて理解したところで、以前に紹介した、呼吸、ラインフォーカス、体の向き、空間の使い方、フレームとスタンスといった要素を合わせて、ようやく手や体を使って、どのようにより効果的なコミュニケーションを取ることができるか考えることができます。

もともとこのエピソードをもってシーズン1を終了する予定でしたが、ちょっと変更がありました。残り1話ですべての情報をお伝えすることはとても無理なので、2回に分けてお伝えすることにします。よって、第10話 「ジェスチャー」は、次回をもって完結することをご了承ください。

 

では、早速、これまでに学んだことと合わせて手がどのように働くかについてお話していきましょう。「手で何をしたらいいのか」の問いに答えるために、まず、手を孤立したコミュニケーションツールとして考えることをやめましょう。

みなさんは、これまでに、ぜひ実用したい手を使ったジェスチャーや、避けたい仕草についての議論や提案を見聞きしたことがあるでしょう。異文化コミュニケーションを経験するときに活用できる、異なる文化圏におけるジェスチャーの使い方や意味の違い、礼儀作法についても読んだり、聞いたことがあるかもしれません。そうした情報は重要ではありますが、それらは単なる習慣、慣例としての身振りや表現に過ぎません。

そのようなジェスチャーは、その動作に何らかの強い関わりがある、あるいはそれにこだわりを持っている人が使うのでなければ意味を持ちません。戦略的コミュニケーターとして注目したいのは、ジェスチャーをコミュニケーションとうまく結びつけ、ジェスチャーの持つ目的をしっかり把握することです。

コミュニケーションの中での手の動作は、体で起こっていることの延長線であり、より複雑なシステムの単なる一部に過ぎません。手を使って伝えたい内容を明確に表現できるようになるためには、コミュニケーションを構成するあらゆる要素それぞれをしっかり関連付けて使う必要があります。

ここでは、手と気持ち、呼吸、そして体がお互いにどう働きあっているのか考えなければならないのです。第1話から第9話まで基本的な考えをまとめてお伝えしてきました。それぞれの要素がジェスチャーとどう関係してくるのか明らかにするために、今一度思い出しながらお話していきます。

 

 

ジェスチャーには2つの種類があります。それは、自然に身についたものと意図的なものです。

自然な動きやジェスチャーは、声を出してコミュニケーションをする時に自然と生まれる、あるいは必然的に体が動くときに見られるものです。こうしたジェスチャーはとっさにおきるもので、日常的なコミュニケーションの中で無意識に取り入れているでしょう。自然なジェスチャーは、無意識のうちに使っているにも関わらず、 メッセージを効果的に伝える助けとなります。

ある人はこの自然なジェスチャーをほんの少ししか使わないかもしれませんし、ある人は状況に関わらず絶え間なく使っているかもしれません。この自然な仕草は人によって、文化によって多様です。続けて自然なジェスチャーについてお話していきますが、ちょっとその前に、より複雑な意図的ジェスチャーを理解していきましょう。

意図的ジェスチャーは、意味を創り出したり印象を与えるために、意図されしっかり考えられ、振り付けされたものです。目的を持って、伝えたいことを強調するために意図的に使用します。

意図的ジェスチャーには2つの重要なことがあります。計画と実行です。よく考えられていない意図的ジェスチャーは、ただの付け足しに終わってしまいます。うまく実際に実行できないときは、ぎこちなく見え、何の利益を得られないこともあります。

しかし、ジェスチャーを使いこなすためには、実際にコミュニケーションの中で練習しなくてはならないでしょう。効果的なコミュニケーションのためには、ジェスチャーは何よりも重要なツールです。意図的ジェスチャーを有効に使うということは、コミュニケーションの目的を達成するために、呼吸やフレーム、体をうまく使いこなすということです。

アリーナ形式の劇場では、大抵、全ての動きが細かく計算され、練習され、繰り返されます。法律や医療分野、人事、あるいはセールス分野で働く人は、日常の仕事の一環として計画された、あるいは想定できる状況の中で活動しています。実際、職業に関わらず、私たちは事前にどのようなアプローチを取るべきか考えた上で、人と接触することがよくあります。しかしそうした場面以外では、公的、または私的コミュニケーションのいずれにしても、臨機応変に自信を持って対応できるように訓練しておきたいものです。

意図的ジェスチャーは、あらかじめ想定できる場合、その時々での対処が必要になった場合、いずれにおいても役に立ちます。では意図的ジェスチャーを効果的に使うにはどうすればよいでしょう。

まず、ジェスチャーを観察してみてください。あなたにとっての自然なジェスチャーはどんな役割を果たしていますか?そのジェスチャーは、あなたの言葉を適切かつ明確にサポートしていますか?

自然なジェスチャーの示し方も個人によって様々です。大きなジェスチャーが苦手で、相手が気づかないようなジェスチャーをする人もいます。腕や手、肩、首、眉を絶え間なく動かさないと話せない人もいるでしょう。既にジェスチャーを駆使して雄弁なスピーチをする人でも、常に工夫し改善する余地があります。

ですから、よく観察してみて下さい。どの自然なジェスチャーが意味や調子、感情、真剣さを伝えるのに役立っていますか?効果のある自然なジェスチャーはどんな仕草か、ちょっと体を動かしてみて実際に体で感じてみましょう。この先の練習でその感覚を生かすことができます。

では次に、あまり好んで使わない仕草や役に立たないプレーンについて見ていきましょう。そうした部分については、新しい体の動かし方を教え込むことで、習慣的に繰り返しているだけの動き以外の可能性を広げることができます。意図的ジェスチャーの訓練をしていくことで、無意味な身振り、手振りをなくして、有効なジェスチャーができるようになります。

これは、本や図に書かれているジェスチャーを真似するのではなく、個人に合った動きを見つける体を使った練習です。

 

 

ここで出てくるいくつかの基本的なジェスチャーには、ラウンドジェスチャーとリニアジェスチャーがあります。

ラウンドジェスチャーは、空間に円を描くような動きをします。さりげなくカップのように丸めた手を使う仕草は、くだけた会話、事細かに説明するとき、またはイベントの進行などに適しています。時にラウンドジェスチャーは、淡々とした態度と一緒になると、横柄でぶっきらぼうに見えることもあります。手と手首を柔軟に動かしたり、腕を大きく振ったりして、手や腕を上下左右に曲線を描くような動かし方と考えてください。またラウンドジェスチャーは、ゆったりと流れるような感じがあります。

リニアジェスチャーは、空間上の垂直軸と水平軸上で、関節を用いるような感じの動きで、フォーマルで直接的な印象を与えます。リニアジェスチャーの直線的できびきびした動きは、主張をはっきりと伝える効果があります。ただロボットのように硬直しているように見えることもあり、張り切ってこうしたジェスチャーを使うと強烈に感じられます。

あなたが自然に行っているジェスチャーは、ランドジェスチャーまたはリニアジェスチャーのどちらの傾向にありますか。どちらかを選んで使わなければいけないわけではありません。実は、話す内容によって意識して使い分けると、それぞれをより効果的にコミュニケーションの中で使うことができます。ラウンドジェスチャーとリニアジェスチャーの両方を組み合わせることで、コミュニケーションの範囲は無限に広がります。

 

 

ではここで、その2つのジェスチャーを使って戦略的目標を達成した例を紹介したいと思います。

私のあるクライアントは科学者で、とある問題を抱えて私のところにやってきました。いくら専門分野に精通していようが、学生に対する熱意があろうが、授業の中で学生との関係をうまく作ることができないでいたのです。

数多くの大学関係のクライアントの中でも、彼は非常に理性的な人で、直接的で事実に基づいたコミュニケーションをとることを最も心地よく感じるタイプです。リニアジェスチャーを使った彼の力強い態度は、研究などにおける分野では効果的で、研究経過や成果などを説明するのに有効です。しかし、教育者としての目標は、同僚グループへの研究発表のような説明をすることではなく、学生と課題について対話をすることです。学生のために彼が作り上げたい学習環境を構築するには、いくつか変更するべきことがありました。

まず、話すときに頻繁に使っていたリニアジェスチャーをもっと柔軟にするようにしました。初めはちょっとぎこちなく感じていたようです。それから、これまでに慣れていたスタッカートのようなカクカクした動きではなく、話すときに、言いたいことを聞き手の方に投げ込むつもりで、腕や手を、円を描くように前方に動かすようにしたのです。ラウンドジェスチャーが自然に感じるまで練習を重ねていくうちに、これまでの細かく途切れていた話し方が徐々にリラックスして、堅苦しい話し方から抜け出していきました。

リニアジェスチャーの角を取ることで、この一連の変化が話し手としての適切な態度を体得することができたのです。20人近い学生を前に、途切れ途切れで端的な話し方を、流暢で快いものに変えることができました。

それから、学生へ向けるラインフォーカスを和らげるようにしました。これまでにフルフロントで学生と向かっていたのをクウォーターターンにすることで直ぐに成果が出ました。

これまでに何度も言及してきたように、コミュニケーションの各要素はすべて連結していて、それぞれが他の要素に影響を与えているのです。そこで重要なのは、声と体は連動しているということです。

私のクライアントの場合は、ラインフォーカスやスタンス、重心に変化を与えることで、これまでの直接的で素っ気ない態度がよりリラックスして打ち解けた感じのものになっていったのです。学生にとって彼の声は、堅苦しく、近づき難い印象を与えていましたが、それが寛容で親近感の持てるものに変化しつつも、自信のある声を保つことができました。こうした変化が聞き手の受け取り方にも変化をもたらしたのです。一方的に話を聞かされているという感覚から対話をしているような感じへと変わっていったのです。

ちょうど良いタイミングと戦略的理由付けをきちんとすることで、自身の言動の変化だけでなく、周囲の状況さえも変えることができるのです。

私のクライアントの場合、質問や意見がある生徒が講義中に発言するのを躊躇しないような、対話型教室環境を作りたいと思っていました。声や体をオープンにして親しみのあるものにすることで、学生にも同じような特徴が反映されていきました。

彼の場合、リニアジェスチャーを全く使わなくしたのではなく、時を選んで使うようにしたのです。授業の全体構成を維持しつつ授業の進行をスムーズにするために、彼にとって自然な仕草を用いました。そして、学生が自由に発言できるような雰囲気を作りたいときはラウンドジェスチャーやクウォーターターンを取り入れ、そこにリニアジェスチャーやフルフロントを所々使うことでメリハリをつけるようにしたのです。

いかに素晴らしい指導者かは、彼の話の内容とは違うところ、つまり彼のコミュニケーションの仕方にあったのです。ジェスチャーが変わったとき、全てが解決したのです。これは意図的ジェスチャーを見直した結果による賜物です。

いうまでもなく、これは簡単なことではありません。癖を克服しようとするときに、声と内容が同期せずに「何か変だ」「私らしくない」と難しさを感じるでしょう。「難しい」とか「私はこうはしない」などと、やってもみないうちに言う人もいます。始めの頃のぎこちなさを通り越して克服さえできれば、ちょっとした努力で、実践しようとするジェスチャーに伴って他のコミュニケーション要素も良い方向へ向いていきます。

 

 

さあ、この後半は、意図的ジェスチャーの実践についてです。

ここからは実際に様々な表現を可能にするジェスチャーの演習を行い、意図的ジェスチャーがどのようなものかを経験していきます。ここであなたの癖は無視します。これから練習していく色々なジェスチャーが、もしかしたらもうすでに身についている人もいるかもしれませんし、全くの新しいアイディアと思う人もいるでしょう!自然に感じるか否かに関わらず、とりあえず一緒に練習してみてください。

まず、しっかりとしたバランスの取れた土台を作って、ベーシックスタンスを取ります。覚えてますか。肩、腰、膝、足が一直線になるように立ちます。そして、胴体の前へ腕をまっすぐ伸ばしてください。今度は、そのまま腕を引いて肘を曲げて下さい。そして両手を肘と同じ高さのところで合わせてみましょう。両手の合わせ方にはいくつかあるでしょう。この手を合わせた状態へすぐ戻れるように、自分の好きな様にしてください。手の平を合わせて指を真っ直ぐにしてもいいですし、握手をするように両手を合わせてもいいですし、指を組むようにしてもいいですよ。自分で楽な方法で手を合わせて、エネルギーと動きが指先に自由に流れるように力を抜きましょう。ギュッと握ってしまうと、エネルギーの流れが止まってしまうので気をつけて下さい。

このベーシックスタンスで手と腕をリラックスさせた状態が、ジェスチャーを自由に展開するきっかけを作ります。この状態を「準備姿勢」とすることにします。

では、準備姿勢の状態で体をフルフロントポジションにします。これまでのように、声を出さずに行ってきた演習とは異なり、ここでは実際に頭の中に何か言いたいことを思い浮かべてみましょう。もし急にそんなことを言われても何も浮かんでこないという人は、よく知っていること、思い通りになる事を考えてみて下さい。誰かにそのことについて説明するか、教えるかのように、実際に声を出して話してみましょう。もし、どうしても相手を想像できない方は、私に向かって話してみてください。

特に専門的、学問的なこと、深い人生経験でなくても、あなたが精通していることであれば何でもいいんです。例えば、娘が趣味でやっているゲームの「ダンジョンとドラゴン」について熱心に話す、というようなことでもいいのです。

では、頭に浮かべた話題と、教えたい、情報を伝えたい、説得したい、説明したい、あるいはただ単にオタクのように話まくりたい、といったような行動の意図を結びつけましょう。20秒間実際に声を出して話してみますが、その間にちょっとした指示を出していきます。

まず始めは、スピーチと一緒に前、左右の空間で、垂直、水平方向にリニアジェスチャーをやってみます。

このとき手や腕の伸ばし方をどう感じるか考えながらやってみましょう。関節を中心とした動きを意識してください。大抵の場合は、手と腕を準備姿勢にするだけで、腕や指先を通ってエネルギーが流れ、気持ちを盛り上げることができますが、人によってはもう少しだけ集中力が必要なこともあります。だとしても心配しないでください。とにかく今は、基本姿勢でフルフロントポジションをとり、リニアジェスチャーを意識的に使った時の感覚を観察してほしいのです。

口で空気を吸ってどのようにしたいか行動の意図を頭に浮かべてから話し始めます。このときリニアジェスチャーを意識的に使ってみてください。今から20秒間やってみましょう。準備はいいですか。ではどうぞ。

(20秒間の沈黙)

では振り返ってみましょう。このタイプの身振りはしっくりとしましたか?自然に感じましたか?個人によって感覚は様々でしょう。私たちは自身についてよく理解していると思っているかもしれません。ある程度はわかっているでしょう。しかし、傾向やクセを改めて見直し、分析することによって、これまでに学んできたコミュニケーションスキルを最大限に活用することができます。

準備姿勢の状態から手を伸ばしていましたか。またはそのまま手を合わせたままでしたか。もし、手がそのまま休んでいる状態だったのであれば、言葉と一緒に、手を前へ伸ばすように心がけてください。

基本姿勢と体の向きはそのままで、今度はリニアジェスチャーを円形の動きでより流動的なラウンジェスチャーにしてみましょう。同じように20秒やってみます。同じ話題について話していきます。もちろん同じ言葉を使っていいですよ。体の感じの違いを比較してみてください。では始めましょう。

(20秒の沈黙)

どうでしょう。リニアジェスチャーと比べて、ラウンドジェスチャーはより自然に感じましたか。それともぎこちなく感じたでしょうか。ラウンドジェスチャーの場合、準備姿勢から自身の前に目一杯腕を伸ばすのが難しかったですか?ラウンドジェスチャーとリニアジェスチャーではどちらがより意識を向けなくてはならなかったですか。どちらも不自然で、かなり意識を集中させなくてはならなかったかもしれませんが大丈夫です。これから練習を重ねていくにつれて、ジェスチャーの感覚を磨いていくことができます。

では引き続き、演習を行いますが、今度はラインフォーカスをフルフロントからクウォーターターンにして、準備姿勢をとってください。ラインフォーカスと体の向きの変化によって、それぞれラウンドジェスチャー、リニアジェスチャーを実践する上で感覚にどのような違いがあるか注意してください。

前半の方でご紹介した私のクライアントの場合のように、円を描くようなジェスチャーはより親しみやすい雰囲気を作り、話し方にも影響を与えます。おそらくクウォーターターンによってこの効果は倍増するでしょう。

滑らかで流れるような丸みを帯びた動きは、舌や心をリラックスさせ、活き活きとした声を生み、より創造的な表現と関係構築を可能にします。しかし、フォーマルで、権威的、あるいは理性的に話さなくてはいけない場合はラウンドジェスチャーは適切ではないでしょう。それには、直線的な動作が必要です。

リニアジェスチャーはフォーマルな内容、事実を述べたり、指示を与えたりするときに使うと、物事を明確に強調して伝えることができます。おそらく、リニアジェスチャーが自然と感じられるのは、ラインフォーカスがフルフロントポジションにあるときでしょう。

考えを入れる箱を空中にイメージして、リストや計画の要点を整理してその箱に投げ入れるつもりで話しましょう。体をどのくらい伸ばして身振りをするかによって、動きの明確さや微妙さ、大胆さや繊細さが決まります。

それぞれのジェスチャーパターンに指定された体の向きがあるわけではありません。角張ったリニアジェスチャーをラウンドジェスチャーの途中で組み込み、クウォーターターンをとると、主張を強調し、明確にする一方で、ラウンドジェスチャーがリニアジェスチャーによる緊張感を緩和することができます。

ではちょっとやってみましょう。今度は40秒間話し、同じ内容をリニアジェスチャーを使って話し、半分が過ぎたところでラウンドジェスチャーに変える合図をします。合図があったらジェスチャーを変えてください。

(40秒の沈黙)

ちょっと時間をとって、体の方向やジェスチャーパターンの色々な組み合わせを適当に切り替えて試しながら、それぞれの感覚の違いを理解するように自分自身でやってみましょう。ここでは2つのジェスチャーについて話していますが、コミュニケーションに関わるその他の要素、つまり体の向き、フレーム、スタンスの保ち方、プレーン、ホリゾンタル、レベルの取り方などを組み合わせていけば表現の幅は無限です。そうしたポジションや動きの呼び方を思い出しながらぜひ練習してみて下さい。

 

 

 

 

ここで動きの範囲についてもお話しておきましょう。ジェスチャーが可能な自分の回りの空間を考えておくことは重要です。まず、手と腕を目一杯伸ばして、前方の空間を捉えてみましょう。そして、両手を横に伸ばして、Tの字を作ってみましょう。

前に戻ってください。今度は、手を目一杯に伸ばした時の距離の半分ほどの位置を確認してみましょう。そして、脇の下にテニスボールがあると想像しながら、腕を前の方に目一杯伸ばした距離の半分の位置まで持ってきましょう。腕はその位置に固定するのではなく、リラックスしてすぐに動きをつけられるようにしてください。肘を曲げ、手を合わせて楽な姿勢を取り、エネルギーを送ります。

今度は、話している間にこの中間の位置から目一杯に腕を伸ばした状態で、前後左右の空間を使ってジェスチャーをして元の準備姿勢に戻ります。多くの人はこうした動きは誇張しすぎであると感じるようです。ではもっと自然に感じるようにしてみてくださいと聞いてみると、やはり同じように空間を目一杯使うことが多いのです。

腕を目一杯に伸ばし、指先からエネルギーを送る練習をしてみると、私たちは全身、特に背中からジェスチャーをつくっていることを感じられると思います。  腕をしっかり伸ばすことで、当然、腕と手だけでなく、体の他の部分も使うことになります。

腕を伸ばすことと、手や指先を通じたエネルギーの流れについて話してきましたが、もう一つのやり方は、指先でエネルギーをはじけさせる練習です。拳をにぎって、その後で指を思い切り伸ばして、できる限り手を大きく広げます。これをスターハンドと呼ぶことにします。拳からスターハンドへ、まるで爆発しているかのようなこの動きを数回繰り返してください。腕をまっすぐのばし、手を思いっきり開くと同時に、強調したい言葉を選んで言ってみてください。

ばかばかしく思うかもしれませんが、これを人前ですることはありませんからご心配なく。今は感覚を掴もうとしているだけです。

次は、話すときに手を伸ばし、腕を開いたままにしておきます。肘を曲げて、体の前で手を合わせて準備姿勢をとります。そして自然と強調したいことを話すときに、手を思いっきり開きます。アイデアを空中に放り込むような感じがしたでしょう。体が慣れてくるまで、前、横の空間を使って話しながらこのジェスチャーを続けてやってみてください。手を広げるたびにエネルギーが背中から指先を通って移動していると感じられれば成功です。その感覚を忘れないでください。

ここで今一度リニアジェスチャーとラウンドジェスチャーを意識して使ってみます。しっかりと腕を伸ばしながら両方のジェスチャーパターンを使って話してみましょう。手を思い切り開いたときに感じたエネルギーの流れの感覚を、実際のコミュニケーションの場に適したジェスチャーを使って引き出してほしいのです。

 

 

今回はまとめに替わって、課題を出します。意図的に考えられた様々なパターンのジェスチャーを、自然なジェスチャーとして無意識のうちに使えるようになるには反復練習と実際の場面で使ってみることが必要です。意図的ジェスチャーを戦略的に使えるようになるために、カジュアルな場面で人を前にして練習してみましょう。手っ取り早いのは食堂やレストランのウエイターとコミュニケーションを取ってみることでしょう。どんなことについて話したいか事前に考えておき、どのようなジェスチャーをいつどのように使うかも考えておきます。状況に適していると同時に、少しチャレンジと感じるジェスチャーパターンや体の動かし方を使ってみてください。

私のクライアントの皆さんは、日常的なコミュニケーションの中で新しいジェスチャーを使って練習してみることで、自信がつき、意図的ジェスチャーを実践的に使う経験を積むことができると報告しています。次のエピソードへ入る準備として、リスクの少ないコミュニケーションにおいて、何度か意図的ジェスチャーを使ってみてください。

今後のエピソードでは、話すことに重点をおいていきますから、自然にジェスチャーと発声を組み合わせられるように練習をしておきましょう。

次回はジェスチャー、アーティキュレーションと思考パート2をお送りします。

 

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写し   11 ジェスチャー、アーティキュレーションと思考 パート     前回のエピソードでは、ジェスチャーを2つのカテゴリーに分けてお話しました。自然なジェスチャーは、無意識のうちに、または即興的に行うジェスチャーです。意図的ジェスチャーは、意識的に目的をもって前もって考えられたジェスチャーのことで、コミュニケーションの目標を達成し、言葉を効果的に伝えるために用いることができます。 このエピソードでは、この2つのカテゴリーのジェスチャーと、ラウンドジェスチャーとリニアジェスチャーの2つの異なるジェスチャーパターンを取り上げ、それらが私たちの思考と発声にどう関わっているのか説明していきます。 ここから先に進む前に、今まで覚えたことを確認することが必要な場合は「呼吸と思考」と「アーティキュレーションと共鳴」をもう一度復習として聞いてみるといいでしょう。またその他にカギとなる概念は、「デイレクティブ思考(行動の意図)」、「基礎呼吸」、「息継ぎ」、「唇、歯、口 といった調音器官」「ジャスチャーのフル活用」などです。     これまでは、それぞれのコミュニケーションに関連する色々なシステムを個別に紹介してきました。そして必要な用語を正しく理解していただけたと思います。これで、それらのシステムを組み合わせて一緒に使うことで、素晴らしい相互作用を生み出す方法を学ぶ準備が整いました。 私たちの話し方と体、ジェスチャーがどのように関係しているかを観察すると、興味深いことがわかります。話の意図と体や声の表現との間には複雑な相互関係があります。 リニアジェスチャーを使うときは、調音器官はある種の音と体の動きを促し、ラウンドジェスチャーは、それらとは異なる声や動作を促すことになります。リニアジェスチャーで話すときは、母音の発音が短くなり、子音の明瞭な発音に重点が置かれます。これは、歯切れの良さと内容が重要であるという感じを与えます。 ラウンドジェスチャーは、母音を伸ばして、発音をより長くする傾向があります。それにより、より滑らかで、言葉の途切れめが少なくなります。 ジェスチャーを意図的に使うと、手や腕を使い方が唇、歯、舌に影響を及ぼして、声と体の動きが連動します。オーケストラの指揮者のように、声はジェスチャーの動きに応じるのです。声は楽器ということです。 例えば、ラウンドジェスチャーのような円を描く様な滑らかなジェスチャーは、途切れずに長く丸みのある母音を伴って、一つの気持ちを次につなげていくように働き、細かなきびきびとしてリニアジェスチャーでは、鋭く従兄一言ごとに区切られて、子音が強調された発音になります。 この音楽のアナロジーを使って話を進めていくために、聞き手の立場からジェスチャーと発音について考えてみましょう。少し考えにくいかもしれませんが、ジェスチャーは無意識のうちに言おうをすることを補強するために働いています。腕をゆさぶったり、肩をすくめたりするようなことまで、いろいろなジェスチャーがあります。 私たちが声を出してコミュニケーションをするとき、ジェスチャーは聴衆にとっては目に見える唯一のコミュニケーション表現と思えますが、実はジェスチャーは聞くこともできるのです。 このシリーズの中で聞いていただいている私の声の音調やリズムの変化は、ジェスチャーの変化も伴っているというよりは、ジェスチャーによって影響を受けているのです。私が、音声の録音をするときは体をフルに動かせる場所で行うように薦めるのは、どんなジェスチャーでも自由にすることができるようにしておくためです。 ラウンドジェスチャーをしながら話すとき、調音器官は長い母音の発音を生みだし、向こう側にいる聴衆をあなたのスピーチに惹きつける効果があります。ですから物語を語るような場合に役立つわけです。ジェスチャーが気持ちと音声を「語り」に適したものにします。チェロの流れるような旋律を考えて下さい。 逆に素早く歯切れの良い動きをするリニアジェスチャーは、区切りがはっきりした音声で伝え鵜ことによって、思考を明確に識別可能な一つ一つの内容に分離します。これには、伸びやかな和音ではなく、スパニッシュギターで弦をかき鳴らす、あるいは時折ギターの胴体を叩いて出すパーカッシブなリズムを想像することができますね。   実際の場面でのジェスチャーと発音の関係は単純なものです。あなたの周囲の人たちのスピーチとコミュニケーションにおいてそれを容易に観察できます。ラウンドジェスチャーは、長い母音の発生を促し、リニアジェスチャーは、明瞭で強い調子の子音の発音を促します。これにはコツが必要です。二つのジェスチャーを適切に織り込んで、あなたの伝えたい内容と意図に適し、かつ強調する話のリズムを作り出すためには、専門的な技が必要です。…

WTF Japanese Transcript 3

写し    1.3 ラインフォーカスとエモーショナルセンター      後の説明でおいおい理解してもらえると思いますが、ラインフォーカスとは、自分の意識や感情が外に向かう時の方向のことです。そしてエモーショナルセンターとは、無意識のうちに、自分の意識や感情を外に放出する、あるいは他人の意識、感情を感じる体の部分のことです。  それでは、最初に日常的なあるシーンを想像してみて下さい。  ちょっと質問があって、あなたが同僚のオフィスにいってみると、ドアがちょうどよく開いている。軽くノックをして、顔を覗かせる。 「今ちょっといいかな?」と声をかけた。部屋の奥に横向きに置かれた机で仕事をしている同僚が、コンピューター画面から目を離して、あなたの顔を確認する。「どうぞ入って。どうしたんだい?」と言いつつも、同僚の体は、コンピューターに向いたまま。「どうぞ、入って」と言われたので部屋に入ったが、同僚はその言葉とは裏腹に、あなたの用件にきちんと対応できる余裕はないように思える。  どうしてでしょうか?ここではいったい何が起きているのでしょう?   今回のテーマは、ラインフォーカスとエモーショナルセンターです。私たちが人と対話をするとき、言葉で表現されることはその一部に過ぎません。コミュニケーションをする上で言葉ではない別の働きによって、重要な情報がやり取りされています。あまり意識してしないかもしれませんが、体は常にコミュニケーションに強く関わる部分を働かせているのです。  ちょっと、あなたの胴体を想像してみてください。そして左右の腰骨をつなぐように直線を引き、さらに肩の先と先を結ぶようにそこにも線を描きます。それから、胴体を囲む四角を描くように、今引いた肩のラインの端から直角になるように、腰骨へ向かって線を引きます。 さて、胴体を囲むような箱が描けたでしょうか。その箱の中に、おへそから7センチ下がったあたりに的を置きます。そのエリアは、対人コミュニケーションの中で、自分自身あるいは話し相手の意識を集める最も重要な場所です。私たちの胴体は、ラインフォーカス、つまり自分の意識や感情が外に向かう時の方向をコントロールしているのです。   では、その箱の中心から体の前に突き出る矢を想像してください。 その矢は、あなたが体の向きを変えると同時に、体と同じ方向に向きます。その向きがラインフォーカスを示しています。そして意識はその両端を行き来しているのです。その体の部分が、コミュニケーションの中でお互いの意識のやり取りや、相手の意識を引きつける役割を果たしています。      さて、ここで先ほどおへその下に描いた的を思い出してみましょう。この部分は多くの武道、伝統芸能、伝統的な医学において重要視され、多くの名前で呼ばれています。気の中心、サンスクリット語でいうとチャクラ、あるいは体の奥から生まれる感覚、いわゆる第六感の源ともいわれています。しかしここでは、エモーショナルセンターと呼んでいきます。  それでは、私たちのエモーショナルセンターが大きく関わるよくある状況について少し考えてみましょう。例えば、間一髪で交通事故を免れたとき、あるいはホラー映画を観てドキッとしたとき、風船が割れてビックリしたときなど考えてください。このような時は、最初に反射的にお腹の中にあるエモーショナルセンターが反応して、ほんの一瞬後に脳が何が起きたのか判断していきます。実際にあなたが意識しているか否かに関わらず、体のこの部分では情報、特に外部からの刺激を感知し、脳で情報を処理する前に体そのままの反応を発信するのに重要な役割を果たしています。    それでは、エモーショナルセンターを実際にコミュニケーションの中でどう使っていくのか、ラインフォーカスとの関係を考えながら説明していきましょう。  私たちは感情によって自然とラインフォーカス変えています。好意を抱いている相手に対する体の向きやラインフォーカスの方向を考えてみてください。友人が話の輪に加わるとき、自然と体はその友人の方へ向き、その存在を認識し、自身の注意を相手に向けるはずです。これは「ラインフォーカスを向けている」状態です。  逆に、興味がない場合は、体を逸らす傾向があります。体を正面に向けていないのは、注意を向けていないことの表れなのです。知らない人が近づいてきたときや、嫌な思いをしたとき、あるいは自分の存在に気づかれたくない時について考えてみてください。そういう時は、相手やその物から体を逸らして、自身の意識がそこにないことを表します。これは「ラインフォーカスを否定している」状態です。  ラインフォーカスはコミュニケーションの中の話し手と聞き手両方に影響します。あなたが相手から体を背けるときは、自分自身が相手を十分に意識していないことを示すのと同時に、相手の意識を100%受け止めていないことを示唆しているのです。ラインフォーカスは常に双方向に働いていて、自身の意識を向けること、相手の意識を受け止めることの両方の役割を果たします。…

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写し    1.7 レベルとホリゾンタル    さて、これまでにコミュニケーションにおける効果的な身体の使い方、相手との位置関係、姿勢などについてお話してきました。 ここでは、高さや空間、距離といったものがどのようにコミュニケーションに関わってくるかについて説明していきます。  一つには制御された環境でお互いに面と向かって立ちながらコミュニケーションをとるような場面があります。しかし実際にそのような状況がどの頻度であるでしょうか。  日常生活の中では、おそらくテーブルに座って会話をしたり、あるいは休憩室や食堂で並んでいる間に立ちながら話したりすることがよくあるでしょう。時には部屋の反対側から相手に話かけるときもあるかもしれません。自分よりも背が高い人、背が低い人、自分よりも身体が大きい人や小さい人と、その中でも社交的な人または内気な人、様々な人と対面することがあります。時には、舞台上から観衆を見下ろしたり、同僚や従業員を前に話さなくてはいけないこともあります。  このような様々な状況は、これまでのエピソードでお話ししてきた体の使い方、相手との位置関係、体の向きや、姿勢がコミュニケーションにどのように働くかに影響します。      レベルとは、他の人や物に対して身体が垂直方向に占める空間と考えてください。例えば、立っている人は、椅子に座っている人や横になっている人とは異なったレベルを占めています。ただし、これは立っているか座っているかだけのことではありません。ステージ上に立っている人は、観衆の中に立っている人とは別のレベルにあり、身長190cmの人と165cmの人では異なるレベルを占めています。背の高い男性が座っていれば、背がそれほど高くない私は、彼と同じレベルにあるということもあります。  ホリゾンタルは、体が人や物に対して水平方向に占める空間のことです。プレーンというのは身体の前後の空間のことをいいます。ホリゾンタルは左右に移動する横方向への動き、つまりプレーン上でどの横位置を取るかということです。  レストラン内のブース席に座っている二人を想像してみてください。テーブルを挟んで向き合った二人を背後から見た場合、二人はお互い真正面を向いて、体がフルフロントポジションの状態で、同じホリゾンタル上に位置していますが、それぞれ異なったプレーンを有しています。横に並んで座った場合は、同じプレーンをとっていますが、それぞれ異なったホリゾンタルに位置していることになります。  座標グラフで考えてみると、横に伸びているX軸はホリゾンタルで、上下に伸びるY軸がレベル、前後に伸びるZ軸がプレーンということになります。グラフ上で考えるのはちょっと難しいかもしれませんね。ここでは単純に上下、前後、左右と表現することにしましょう。      では、まずレベルについてお話します。レベルの基本は、縦方向に注意を向けるということです。 大抵の場合、頭の位置を確認することによって相手が占めているレベルを決定づけることができます。逆立ちしている場合を除いては、頭は人が身体が占める空間の一番高いところにあります  立ったり、座ったり、ひざまずいたり、横たわったりすることで、とっさにレベルを変えることができます。時には、建物の構造、あるいは地形によってレベルが決まることもあります。建物の多くは、人為的に作り出したレベルによってある特殊な効果を生み出すように設計されています。劇場、公共ステージ、表彰台、教会、シナゴーグ、モスク、法廷などの建物は人々の注意を引き、注目を集めるためにレベルとホリゾンタルの機能を考えて設計され、一体感や分断の度合いを通して、特定の情報を伝達することができます。  ちょっと法廷の様子を想像してみてください。裁判官席は法廷のどの場所よりも高い位置にあります。裁判中、検察官や弁護士は立ったり座ったりしてレベルを絶え間なく変えるところ、裁判官はずっと座ったままです。証人台は、被告人席より高いところにありますが、それでも裁判官席からは1段2段下がったところにあります。この特異な位置関係では、法廷の設計の仕方によって、ある権限を裁判官に与え、その空間に存在するすべての人物と一線を画しているのです。裁判官は、法廷の中で特別なレベルを占めているのです。誰もそのレベルを共有することはできず、それによって象徴的な分離が生じます。裁判官の視線は、弁護士、検察官、被告、証人などに下がり、彼らの視線は裁判官に向かって上向きになることになります。  さて、続いては劇場でのコンサートに行ったとしましょう。パフォーマンスは、高く作られたステージで行われます。そのため、演奏者と観客が分離された状態になります。アーティストが舞台から降りて観客の間を練り歩くような公演行ったことがあるとすれば、アーティストが観客とレベルを合わせるようにしたときの雰囲気は全く違ったものになる事がわかると思います。  レベルを戦略的に利用するための鍵は、いつレベルの格差を創るかまたは無くすかということです。共感できる経験をつくりだしたい時は、自然と相手と同じレベルに自身を位置づけるのが普通です。  子供と遊ぶときに子供のレベルまで腰を下げたり、全員がそろって椅子に腰をかけてから食事を始めたり、チームメートが負傷したときは、そのプレーヤーの回復を膝をついて待ったりするということがあります。アナウンサーが聴衆に「皆さん、立って下さい」と言うとき、…

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写し    1.5 プレーン    コミュニケーションにおいて、相手との距離感は色々な意味を持ちますが、それは二つの方法で変えることが出来ます。一つは上体を前かがみにする、あるいは後ろに反らすことです。後で詳しく説明しますが。これを「プレーンを越える」と言います。もう一つは自分のいる場所を前後に移すことです。これを「プレーンを変える」と言います。    では「プレーン」という言葉がどのような意味を持つのか定義づけを行いましょう。そのために、まず10人の人々が直線上に横向きに肩を並べた状態で、一列に立っている場面を想像してください。  次に、全員が回れ右をして縦方向に並んでいる場面を考えてみて下さい。肩を並べて並んだ最初の例では、それぞれが個別の空間に位置していますが、全ての人が同じプレーンに立っています。全員が縦向きで並んだ二番目の例では、人々はそれぞれ別々のプレーンに立っています。  横向きに一列に並んだグループの1人を一歩手前に動かして、残りの9人はそのままの場所に並ばせてみましょう。これを「プレーンを変える」といいます。つまり直線上から手前または奥へと移動する前後の動きです。  そして今度は、残りの9人の両端に立っている人を一歩後ろへ下げます。そうすると、始めは一列に並んでいた10人が三つの異なったプレーンに位置することになります。この三つの異なったプレーンは、あなたとの関係の近さの違いになります。    次に、あなたとの関係に影響するもう一つのタイプのプレーンを紹介しましょう。今度は自身を取り巻く個人空間を考えてください。立っている状態または座っている状態で背中を真っ直ぐにし、頭、肩、腰が一直線になるように姿勢を整えます。頭の先から胴体を通り、足元までつながる直線を思い描いて下さい。足を踏み出したり、座っている場合は動くことなく、上半身を前に傾けて下さい。そうすることで頭と胴体が体を通る線の片側に傾きます。これを「プレーンを越える」といいます。  体全体を動かすのではなく、上半身のみ前に傾けたり、後ろに反らせることでプレーンを行き来することができます。半歩踏み出したり、後ろへ下がったり、あるいはあごを上げたり下げたりするだけの単純な仕草でもプレーンを越えることができます。体がプレーンを行き来する度に、なんらかの情報や意味を伝えているのです。  机から立ち上がって窓に向かって歩いていく時、それはプレーンを変えていることになるのです。あるいは、政治家が演説台で拳をふって体を前のめりにしたり、また体をまっすぐに立てて自分自身の個人空間に戻るようなときも「プレーンを越えて」いるのです。     プレーンを前に移すと、私たちの態度や感情についてある情報を伝えることができます。スピーチや会話の内容によっては、話し相手やオーディエンスに近づくことは、自身の伝えたいことに熱意あるいは攻勢的な意味合いを持たせることができるのです。プレーンを前に移すことで、話し手と聞き手の間の物理的な距離を無くすことができるということを覚えておいてください。その距離を縮めたい場面はしばしばあることで、それは様々な方法で可能になります。  相手とよりよい関係を築き親密になるためには、共有できる空間を作ることが有効なので、そのために相手との距離を縮めようとします。しかし、誰もが経験したことのあるように、状況や関係によっては相手がプレーンを変えることで、脅迫感を感じたり、個人空間が侵されたように思うこともあるでしょう。このように不快感を感じる状況で、あなたはどのように反応するでしょう。不快に感じるその状況から抜け出すために、自然と体は後ろのめりになり、一歩引いたり、あるいはその場から離れるなどするはずです。    ここで以前にお話したラインフォーカス、つまり自分の意識や感情が外に向かう時の方向について思い出してください。私たちは、自身の第六感や本能的反応の源であるエモーショナルセンターを望まない刺激から守るために、ラインフォーカスを逸すということを覚えているでしょうか。  反射的にプレーンを変化させる場合についても同様に考えてみましょう。興味深い話を聞いたり、スポーツやライブのようなイベントに行って夢中になっている場合のことを考えてください。あなたの体はどんな反応をみせますか?講義を聞いているのであれば机から体を乗り出しているでしょうし、スポーツ観戦で延長戦に入ったときやホラー映画を観ている場合には椅子の手前に腰掛けるでしょう。体を前のめりにして会話を聞いたりすることもあります。あえてそうしなくても、話は十分に聞こえているのにです。こうした反応は自身が興味を示していることの表れです。   (スポンサー)    近所の飲み屋やレストランを覗いてみると、プレーンを使った複雑なコミュニケーションの一環を垣間見ることができます。プレーンとラインフォーカスの向けられ方を観察することによって、誰が誰に関心を抱いているのか、あるいは関心が全くないのか容易に判断できます。…

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