写し 11 ジェスチャー、アーティキュレーションと思考 パート

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11 ジェスチャー、アーティキュレーションと思考 パート

 

 

前回のエピソードでは、ジェスチャーを2つのカテゴリーに分けてお話しました。自然なジェスチャーは、無意識のうちに、または即興的に行うジェスチャーです。意図的ジェスチャーは、意識的に目的をもって前もって考えられたジェスチャーのことで、コミュニケーションの目標を達成し、言葉を効果的に伝えるために用いることができます。

このエピソードでは、この2つのカテゴリーのジェスチャーと、ラウンドジェスチャーとリニアジェスチャーの2つの異なるジェスチャーパターンを取り上げ、それらが私たちの思考と発声にどう関わっているのか説明していきます。

ここから先に進む前に、今まで覚えたことを確認することが必要な場合は「呼吸と思考」と「アーティキュレーションと共鳴」をもう一度復習として聞いてみるといいでしょう。またその他にカギとなる概念は、「デイレクティブ思考(行動の意図)」、「基礎呼吸」、「息継ぎ」、「唇、歯、口 といった調音器官」「ジャスチャーのフル活用」などです。

 

 

これまでは、それぞれのコミュニケーションに関連する色々なシステムを個別に紹介してきました。そして必要な用語を正しく理解していただけたと思います。これで、それらのシステムを組み合わせて一緒に使うことで、素晴らしい相互作用を生み出す方法を学ぶ準備が整いました。

私たちの話し方と体、ジェスチャーがどのように関係しているかを観察すると、興味深いことがわかります。話の意図と体や声の表現との間には複雑な相互関係があります。

リニアジェスチャーを使うときは、調音器官はある種の音と体の動きを促し、ラウンドジェスチャーは、それらとは異なる声や動作を促すことになります。リニアジェスチャーで話すときは、母音の発音が短くなり、子音の明瞭な発音に重点が置かれます。これは、歯切れの良さと内容が重要であるという感じを与えます。

ラウンドジェスチャーは、母音を伸ばして、発音をより長くする傾向があります。それにより、より滑らかで、言葉の途切れめが少なくなります。

ジェスチャーを意図的に使うと、手や腕を使い方が唇、歯、舌に影響を及ぼして、声と体の動きが連動します。オーケストラの指揮者のように、声はジェスチャーの動きに応じるのです。声は楽器ということです。

例えば、ラウンドジェスチャーのような円を描く様な滑らかなジェスチャーは、途切れずに長く丸みのある母音を伴って、一つの気持ちを次につなげていくように働き、細かなきびきびとしてリニアジェスチャーでは、鋭く従兄一言ごとに区切られて、子音が強調された発音になります。

この音楽のアナロジーを使って話を進めていくために、聞き手の立場からジェスチャーと発音について考えてみましょう。少し考えにくいかもしれませんが、ジェスチャーは無意識のうちに言おうをすることを補強するために働いています。腕をゆさぶったり、肩をすくめたりするようなことまで、いろいろなジェスチャーがあります。

私たちが声を出してコミュニケーションをするとき、ジェスチャーは聴衆にとっては目に見える唯一のコミュニケーション表現と思えますが、実はジェスチャーは聞くこともできるのです。

このシリーズの中で聞いていただいている私の声の音調やリズムの変化は、ジェスチャーの変化も伴っているというよりは、ジェスチャーによって影響を受けているのです。私が、音声の録音をするときは体をフルに動かせる場所で行うように薦めるのは、どんなジェスチャーでも自由にすることができるようにしておくためです。

ラウンドジェスチャーをしながら話すとき、調音器官は長い母音の発音を生みだし、向こう側にいる聴衆をあなたのスピーチに惹きつける効果があります。ですから物語を語るような場合に役立つわけです。ジェスチャーが気持ちと音声を「語り」に適したものにします。チェロの流れるような旋律を考えて下さい。

逆に素早く歯切れの良い動きをするリニアジェスチャーは、区切りがはっきりした音声で伝え鵜ことによって、思考を明確に識別可能な一つ一つの内容に分離します。これには、伸びやかな和音ではなく、スパニッシュギターで弦をかき鳴らす、あるいは時折ギターの胴体を叩いて出すパーカッシブなリズムを想像することができますね。

 

実際の場面でのジェスチャーと発音の関係は単純なものです。あなたの周囲の人たちのスピーチとコミュニケーションにおいてそれを容易に観察できます。ラウンドジェスチャーは、長い母音の発生を促し、リニアジェスチャーは、明瞭で強い調子の子音の発音を促します。これにはコツが必要です。二つのジェスチャーを適切に織り込んで、あなたの伝えたい内容と意図に適し、かつ強調する話のリズムを作り出すためには、専門的な技が必要です。

まとまりがなく、長い間話し続ける人に耳を傾けなければならないのは苦痛です。それは、接続詞がいっぱい使われて次から次へと続く物語の内容を追ってくのが難しいのと同じようなものです。

戦略的コミュニケーターとしては、物語の語り口と簡潔さの間のバランスを見つけ、それをコントロールしたいと考えます。このためには、意図的ジェスチャーの計画と実行という課題に戻ることになります。

あらかじめ考えていたことを話すときは、事前にその内容にあったジェスチャーを考えて話の中に組むことができます。これは、以前に話した発音と発声のウォームアップやジェスチャーの演習とともに、通常の習慣の一部とすべきです。

しかし、事前に準備ができない場合は、ジェスチャーを考慮する時間を見つけることができるでしょうか。前回のエピソードでお話したように、時間をかけてでも、いくつか選択したジェスチャーパターンを身につけて、ごく自然に使えるようにしたいものです。これは、役立つ習慣を具現化するのに役立ちます。またより広い観点からあなたのパフォーマンスを判断することにもなります。

話の重要なポイントで使用するジェスチャーを考えておくことは、事前に準備できる場合には強力なツールとなりますが、話す内容があらかじめ決まっていないときのスピーチで使える戦略ではありません。

リアルタイムで話を進める際には、行動の指針を持つことで適切なジェスチャーを選び計画することができます。行動の指針、つまり考えていることを物語のように伝える必要があるからラウンドジェスチャーを使う、あるいは事実を明確に述べるために、リニアジェスチャーを使うということから自ずと導き出されます。

次に、ジェスチャーと発音をうまく結びつけるための基盤として呼吸を用います。基礎呼吸を行う前に、これから話そうとする内容が事実についてのものか、あるいは物語に属するものなのかを自らに問うことができます。その答えが、ディレクティブ思考、つまり行動の指針となります。私は物語を話すつもりだ、あるいは私は事実を与えるつもりだなどといったものです。

その指針を基にして呼吸することで、私たちの声や、精神的、肉体的なシステムがうまくからみ合うようにするでしょう。このプロセスを理解することで、ジェスチャー、発音、思考の関係を利用して、共通の目的に向けていろいろなシステムを統して、パフォーマンスをより良いものにすることができます。

 

<まとめ>

 

  1. ラウンドジェスチャーを使うと、調音器官が母音を伸ばして流れるような表現を可能にする
  2. リニアジェスチャーを使うと、調音器官は子音を強調し、簡潔で歯切れの良い表現になる
  3. 意識的なジェスチャーを含めて、話し方についての指針を持つことで, あなたの体と発音の両方をうまくかみ合わせることができる
  4. それぞれのシステムをお互いをサポートするようにうまく使いこなすことで、問題なく場面に応じた対処ができる

 

 

 

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写し    1.5 プレーン    コミュニケーションにおいて、相手との距離感は色々な意味を持ちますが、それは二つの方法で変えることが出来ます。一つは上体を前かがみにする、あるいは後ろに反らすことです。後で詳しく説明しますが。これを「プレーンを越える」と言います。もう一つは自分のいる場所を前後に移すことです。これを「プレーンを変える」と言います。    では「プレーン」という言葉がどのような意味を持つのか定義づけを行いましょう。そのために、まず10人の人々が直線上に横向きに肩を並べた状態で、一列に立っている場面を想像してください。  次に、全員が回れ右をして縦方向に並んでいる場面を考えてみて下さい。肩を並べて並んだ最初の例では、それぞれが個別の空間に位置していますが、全ての人が同じプレーンに立っています。全員が縦向きで並んだ二番目の例では、人々はそれぞれ別々のプレーンに立っています。  横向きに一列に並んだグループの1人を一歩手前に動かして、残りの9人はそのままの場所に並ばせてみましょう。これを「プレーンを変える」といいます。つまり直線上から手前または奥へと移動する前後の動きです。  そして今度は、残りの9人の両端に立っている人を一歩後ろへ下げます。そうすると、始めは一列に並んでいた10人が三つの異なったプレーンに位置することになります。この三つの異なったプレーンは、あなたとの関係の近さの違いになります。    次に、あなたとの関係に影響するもう一つのタイプのプレーンを紹介しましょう。今度は自身を取り巻く個人空間を考えてください。立っている状態または座っている状態で背中を真っ直ぐにし、頭、肩、腰が一直線になるように姿勢を整えます。頭の先から胴体を通り、足元までつながる直線を思い描いて下さい。足を踏み出したり、座っている場合は動くことなく、上半身を前に傾けて下さい。そうすることで頭と胴体が体を通る線の片側に傾きます。これを「プレーンを越える」といいます。  体全体を動かすのではなく、上半身のみ前に傾けたり、後ろに反らせることでプレーンを行き来することができます。半歩踏み出したり、後ろへ下がったり、あるいはあごを上げたり下げたりするだけの単純な仕草でもプレーンを越えることができます。体がプレーンを行き来する度に、なんらかの情報や意味を伝えているのです。  机から立ち上がって窓に向かって歩いていく時、それはプレーンを変えていることになるのです。あるいは、政治家が演説台で拳をふって体を前のめりにしたり、また体をまっすぐに立てて自分自身の個人空間に戻るようなときも「プレーンを越えて」いるのです。     プレーンを前に移すと、私たちの態度や感情についてある情報を伝えることができます。スピーチや会話の内容によっては、話し相手やオーディエンスに近づくことは、自身の伝えたいことに熱意あるいは攻勢的な意味合いを持たせることができるのです。プレーンを前に移すことで、話し手と聞き手の間の物理的な距離を無くすことができるということを覚えておいてください。その距離を縮めたい場面はしばしばあることで、それは様々な方法で可能になります。  相手とよりよい関係を築き親密になるためには、共有できる空間を作ることが有効なので、そのために相手との距離を縮めようとします。しかし、誰もが経験したことのあるように、状況や関係によっては相手がプレーンを変えることで、脅迫感を感じたり、個人空間が侵されたように思うこともあるでしょう。このように不快感を感じる状況で、あなたはどのように反応するでしょう。不快に感じるその状況から抜け出すために、自然と体は後ろのめりになり、一歩引いたり、あるいはその場から離れるなどするはずです。    ここで以前にお話したラインフォーカス、つまり自分の意識や感情が外に向かう時の方向について思い出してください。私たちは、自身の第六感や本能的反応の源であるエモーショナルセンターを望まない刺激から守るために、ラインフォーカスを逸すということを覚えているでしょうか。  反射的にプレーンを変化させる場合についても同様に考えてみましょう。興味深い話を聞いたり、スポーツやライブのようなイベントに行って夢中になっている場合のことを考えてください。あなたの体はどんな反応をみせますか?講義を聞いているのであれば机から体を乗り出しているでしょうし、スポーツ観戦で延長戦に入ったときやホラー映画を観ている場合には椅子の手前に腰掛けるでしょう。体を前のめりにして会話を聞いたりすることもあります。あえてそうしなくても、話は十分に聞こえているのにです。こうした反応は自身が興味を示していることの表れです。   (スポンサー)    近所の飲み屋やレストランを覗いてみると、プレーンを使った複雑なコミュニケーションの一環を垣間見ることができます。プレーンとラインフォーカスの向けられ方を観察することによって、誰が誰に関心を抱いているのか、あるいは関心が全くないのか容易に判断できます。…

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