WTF Japanese Transcript 3

写し

  

1.3 ラインフォーカスとエモーショナルセンター

 

 

 後の説明でおいおい理解してもらえると思いますが、ラインフォーカスとは、自分の意識や感情が外に向かう時の方向のことです。そしてエモーショナルセンターとは、無意識のうちに、自分の意識や感情を外に放出する、あるいは他人の意識、感情を感じる体の部分のことです。

 それでは、最初に日常的なあるシーンを想像してみて下さい。

 ちょっと質問があって、あなたが同僚のオフィスにいってみると、ドアがちょうどよく開いている。軽くノックをして、顔を覗かせる。

「今ちょっといいかな?」と声をかけた。部屋の奥に横向きに置かれた机で仕事をしている同僚が、コンピューター画面から目を離して、あなたの顔を確認する。「どうぞ入って。どうしたんだい?」と言いつつも、同僚の体は、コンピューターに向いたまま。「どうぞ、入って」と言われたので部屋に入ったが、同僚はその言葉とは裏腹に、あなたの用件にきちんと対応できる余裕はないように思える。

 どうしてでしょうか?ここではいったい何が起きているのでしょう?
 

 今回のテーマは、ラインフォーカスとエモーショナルセンターです。私たちが人と対話をするとき、言葉で表現されることはその一部に過ぎません。コミュニケーションをする上で言葉ではない別の働きによって、重要な情報がやり取りされています。あまり意識してしないかもしれませんが、体は常にコミュニケーションに強く関わる部分を働かせているのです。

 ちょっと、あなたの胴体を想像してみてください。そして左右の腰骨をつなぐように直線を引き、さらに肩の先と先を結ぶようにそこにも線を描きます。それから、胴体を囲む四角を描くように、今引いた肩のラインの端から直角になるように、腰骨へ向かって線を引きます。

さて、胴体を囲むような箱が描けたでしょうか。その箱の中に、おへそから7センチ下がったあたりに的を置きます。そのエリアは、対人コミュニケーションの中で、自分自身あるいは話し相手の意識を集める最も重要な場所です。私たちの胴体は、ラインフォーカス、つまり自分の意識や感情が外に向かう時の方向をコントロールしているのです。 

 では、その箱の中心から体の前に突き出る矢を想像してください。

その矢は、あなたが体の向きを変えると同時に、体と同じ方向に向きます。その向きがラインフォーカスを示しています。そして意識はその両端を行き来しているのです。その体の部分が、コミュニケーションの中でお互いの意識のやり取りや、相手の意識を引きつける役割を果たしています。

 

 

 さて、ここで先ほどおへその下に描いた的を思い出してみましょう。この部分は多くの武道、伝統芸能、伝統的な医学において重要視され、多くの名前で呼ばれています。気の中心、サンスクリット語でいうとチャクラ、あるいは体の奥から生まれる感覚、いわゆる第六感の源ともいわれています。しかしここでは、エモーショナルセンターと呼んでいきます。

 それでは、私たちのエモーショナルセンターが大きく関わるよくある状況について少し考えてみましょう。例えば、間一髪で交通事故を免れたとき、あるいはホラー映画を観てドキッとしたとき、風船が割れてビックリしたときなど考えてください。このような時は、最初に反射的にお腹の中にあるエモーショナルセンターが反応して、ほんの一瞬後に脳が何が起きたのか判断していきます。実際にあなたが意識しているか否かに関わらず、体のこの部分では情報、特に外部からの刺激を感知し、脳で情報を処理する前に体そのままの反応を発信するのに重要な役割を果たしています。

 

 それでは、エモーショナルセンターを実際にコミュニケーションの中でどう使っていくのか、ラインフォーカスとの関係を考えながら説明していきましょう。

 私たちは感情によって自然とラインフォーカス変えています。好意を抱いている相手に対する体の向きやラインフォーカスの方向を考えてみてください。友人が話の輪に加わるとき、自然と体はその友人の方へ向き、その存在を認識し、自身の注意を相手に向けるはずです。これは「ラインフォーカスを向けている」状態です。

 逆に、興味がない場合は、体を逸らす傾向があります。体を正面に向けていないのは、注意を向けていないことの表れなのです。知らない人が近づいてきたときや、嫌な思いをしたとき、あるいは自分の存在に気づかれたくない時について考えてみてください。そういう時は、相手やその物から体を逸らして、自身の意識がそこにないことを表します。これは「ラインフォーカスを否定している」状態です。

 ラインフォーカスはコミュニケーションの中の話し手と聞き手両方に影響します。あなたが相手から体を背けるときは、自分自身が相手を十分に意識していないことを示すのと同時に、相手の意識を100%受け止めていないことを示唆しているのです。ラインフォーカスは常に双方向に働いていて、自身の意識を向けること、相手の意識を受け止めることの両方の役割を果たします。

 

 

 私たちが相手に体を向けているときは、相手に対して興味を示し、十分な注意を払っていることを表しますが、覚えておかなければならないのは、それと同時にあなたのエモーショナルセンターを完全に開いているということです。

 つまり、エモーショナルセンターとは、無意識のうちに、自分の意識・感情を外に放出する、あるいは他人の意識、感情を感じる体の部分のことをいいます。場合によっては、その事がいい影響を与えるかもしれませんし、逆にリスクを負う形にもなり兼ねません。

 時に、相手から少し体をずらしながらも、目は相手を見ているような状況があります。この体の向け方だと、エモーショナルセンターへの打撃を最小限に留めることができ、さらに相手に対して柔らかく、非対立的な印象を与えることができます。

 元気いっぱいでガツガツ話す人と話すときは、誰でもちょっと閉口させられるという経験をしたことがあるはずです。それどころか、高慢で、威圧的にさえ感じるかもしれません。それは、エモーショナルセンターを全開にしてラインフォーカスを相手に向け続け、自分が伝えたいことを相手に浴びせかけるコミュニケーションのやり方によるものです。こうした状況で、あなたが体を背けたくなるのは、体が無意識のうちに、自身のエモーショナルセンターと相手からのとラインフォーカスとの繋がりを断ち切ろうとしているからなのです。

 また、背を向けた途端、体を逸らした相手がその途切れた繋がりを修復しようと、あなたの前に立ちはだかるということは誰もが経験したことがあることでしょう。これを「カウンタリング」呼びます。どうでしょう。徐々にどういうことかわかってきたでしょうか。

 

 これまでのところ、無意識のうちに起こる体の動きについてお話をしてきましたが、ここからは、どうやって意識的にラインフォーカスとエモーショナルセンターをコミュニケーションの中で使っていくのか考えていきます。

 まず、日常生活においてこのラインフォーカスを活用できる場面を考えていきましょう。オープニングのオフィスでの一場面を覚えていますか?同僚のオフィスを覗くと、「どうぞ」という声とは裏腹に、同僚の体はそっぽを向いていて、あなたへ意識を集中している気配が感じられませんでした。強力なメッセージ性のあるラインフォーカスが欠如しているために、相手の言葉や目があなたへ注目していたとしても、結局は意識があなたに向いていないことを示していたのです。

この例では、あなたは二つの相異なる情報を得る立場にありました。

 では今度は、机に座っている同僚の立場になって、このシチュエーションにどう対応すべきかみていきましょう。

 あなたが本当は立て込んでいて時間が割けないときは、これまで話してきたように、意識的に言葉に沿ったラインフォーカスを示すことが重要だとわかるはずです。もし「どうぞ」と相手を迎えたのであれば、体も一緒に相手を受け入れる態度を示すべきなのです。そうすれば、あなたの意思が明確に相手に伝わります。

 逆に、もし忙しくて時間がないのであれば、ラインフォーカスを逸らして、意識がそこにないことを示唆するのと同時に、言葉でもそのことを示さなければいけません。あなたは礼儀として、とりあえず「どうぞ」と言ったのかもしれませんが、言葉とは裏腹に体が違うメッセージを伝えているのなら、礼儀と思って言った言葉でも、同僚にとってはそうではありません。

 

 

 しかし、ラインフォーカスをどう操るかを意識することで、こうした簡単な誤解を招くことはなくなります。例えば、あなたが集団の中にいるときや見知らぬ人たちの中にいるときには一人でいたいと思うタイプの場合、あるいはたまたま初対面の人と話すのが嫌な時は、ラインフォーカスを周りの群衆から背け、目も合わないようにそっぽを向けることで、あなたの意識がそこにないことを表すはずです。今度、そういう集団の中で対話をする機会があれば、相手の立場になって少し考えてみてください。あなたもこれまでに、相手の意識が注がれ、そのエネルギーを感じることで圧倒されてしまった経験があるでしょう。逆に、あなたのエネルギーが他の人を閉口させていることもあるかもしれません。

 では存在感に安心感を与え、非対立的な雰囲気を作り出すためにはどうすればよいでしょう。それは目は相手をしっかり捉えつつも、ラインフォーカスをずらして、エモーショナルセンターを相手から若干逸らすことで可能になります。私のクライアントの中にもシャイで内気人達がたくさんいます。こういう性格の人にとっては、職場での会話や社交の場で人とやりとりをしなければいけないことが億劫に感じられるかもしれません。個人空間が侵害されている、あるいは、注目を集めたくないという不安感が生じたときは、ラインフォーカスを変えることで自身のエモーショナルセンターを守ることができます。少し体をズラすことで、エモーショナルセンターがむき出しになることはありません。そうすることで自分の気持ちをしっかり保つことができると同時に、注目の矛先になることを最小限に留めるスタンスをとって自分を守ることができるのです。

 

 さあ、いかがだったでしょうか。戦略的なコミュニケーションを可能にするための基本を紹介する初級シリーズをお聞きいただきありがとうございます。

 

エピソードのまとめ

 

 1、 ラインフォーカスを通して、あなたの体は多くの情報を伝え、受け取る。

 2、 ラインフォーカスは、あなたがどうやって注目を集めたり、注意を払ったりすることに影響する。

 3、 おへその下にあるエモーショナルセンターは情報を受信することと、ありのままの反応を起こ

   すのに大きな役割を果たしている。

 4、 ラインフォーカスをどのように、どこに向けるかを意識的に考えることによって、エモーショナル

   センターを守ることも、それを積極的に使うこともできる。

 5、 言葉とラインフォーカスを一致させることで、より明確なコミュニケーションが可能になる。

 

 ラインフォーカスを戦略的に使いこなす方法はたくさんあります。しかし、その方法をご紹介する前に、今日お話したことをもう少し掘り下げていく必要があります。ラインフォーカスを変えてといいますが、いったい何をどうすればいいのでしょう。それは、次回のエピソード、ラインフォーカスと体の向きで詳しく説明していきます。

  

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写し 4 ラインフォーカスと体の向き

写し   4 ラインフォーカスと体の向き 私のクライアントでカリスマ的な男性がいます。身長190センチ、体重90キロの大柄な人です。彼は仕事上色々な人と人間関係を構築し、その関係を保たなくてはなりません。大勢の人前で話す時の彼には堂々とした存在感があります。しかも、個人レベルで対応することにも秀でているのです。時には、その堂々とした存在感を、威圧感がない温か存在へと変化させることができます。そして、また聴衆再び部屋全体を一瞬にして掌握するスキルを持っています。 前回のエピソードでは、ラインフォーカスについて基本的な考えを紹介しました。ここではさらにそれを使い、コントロールする方法を考えていきます。     それでは、早速ラインフォーカスと体の向きについて説明していきます。 まず、体の向きを表す図を描いていきます。ここでは演劇学から学べる言葉を引用して、コミュニケーションをとる時の体の向きについて考えていきます。これから描いていく図は、対人、対物、さらには対空間の位置関係も含んでいます。 それでは、まず何もない部屋の床に大きな円を描くところから始めましょう。そして、その円を半分にするように真ん中に線を一本引きます。それから、その線と交差するように円を4等分する線を引きます。最後に、それぞれの線の間に、円の端と端の2点を結ぶ線を引くと、円を八つ切りにする線が描けます。 あなたは円の中心にいます。そこで、あなたの目の前にある点に、あなたに面と向かうように人を置きます。この点、つまりあなたに正面を向いて立っているこの人の位置を「フルフロントポジション」とします。その隣りの点のそれぞれ2点にまた人を置きます。それぞれの人の体は、真正面からは少し左または右斜めになりますね。この位置を、「クォーターターン」といいます。次は、円の真横、つまりコンパスでいうと東西を指している点に人を置きます。中心からみると、横顔しか見えていないはずです。この位置を「ハーフポジション」、または「プロファイルポジション」といいます。続いて、そのまま円をたどっていくと、ハーフポジションを結んだ線に対しクォーターターンと正反対の位置に点があります。ここに人を置くと、その人はあなたからそっぽを向いた状態になります。この位置をスリークォーターターンと呼びます。最後に、フルフロントポジションの真反対にあり、あなたからはそこに立っている人の背中しか見えない位置を「フルバックポジション」と呼びます。   では、これらの位置が、ラインフォーカスについて考えるときどのような意味を持つのか説明していきましょう。フルフロントポジションにある人は、ラインフォーカスを100%あなたに向けている状態です。前回のエピソードで、胴体を囲む四角を描いたのを覚えていますか。この「フルフロントポジション」では、その四角を真正面に見ることができるでしょう。この位置は、最もフォーマルな状況、対立的な場面、または全面的な注意を払うべき場面で用いられるでしょう。 例えば、教室内の教師と生徒が向かい合っている状態、これがフルフロントポジションです。または、雇用主と従業員が机を挟んで話し合っている様子などが考えられます。あるいは、映画館や劇場の座席はスクリーンや舞台に正面を向いていますね。観客のエモーショナルセンターと目の前で起きている出来事の間では直接的な情報交換が行われているのです。 クォーターターンの位置では、ラインフォーカスが真正面から向けられていないので、双方の関係はより緩やかなものになります。この位置では相手からの関心や注目を受けることはできますが、フォーマルではなく、対立的な印象を受けることもありません。このクォーターターンで、エモーショナルセンターが正面から少しズレた状態だと、相手への応対が強制されにくい状態でコミュニケーションを円滑に進めることができます。この位置は、社交の場、またはカジュアルなプレゼンの場、あるいはよく知っている相手同士や、親密な関係の人同士の間によく見られます。あるいは、パーティーやバーで人と接している時、本を観衆に向けて読む時、大きなグループで話すときにそこにいる人たち全員が等しく加わることが出来るようにしている状況でみられるはずです。 円の半分にあたるハーフまたはプロファイルポジションでは、ラインフォーカスがあなたから90度ずれています。この位置の人が、あなたに完全に意識を向けるための唯一の方法は、頭をあなたの方向に向け、一緒に視線も集中させることです。しかし、その場合ラインフォーカスと相手の意識の多くがあなた以外に向いているので、相手のエモーショナルセンターと接点を持つことができません。この位置でも会話をすることは可能ですが、きちんとした情報伝達を行うためには、当事者同士が、その意識をお互いに向けて、クォーターターンかフルフロントポジションになるよう体を向けることが必要です。 (章区切りのため2行挿入)   さて、次は会話を交わしている二者の間にあなたが加わるような状況を考えてみましょう。最初の二人は、あなたを会話に入れたいと思うのであれば、体の向きをクォーターターンにして、三人が円を描くように体を動かすでしょう。もし、この二人が体の向きを変えないままだと、それは彼らがあなたに興味を示していないサインであり、会話にあなたを入れようとする意志がないことを示します。 スリークォーターターンとフルバックポジションは、相手との関係を断ち切る体勢にあり、エモーショナルセンターを相手と繋げる意思がないことの表れなのです。スリークォーターターンでは、ラインフォーカスがほぼ完全にあなた以外に向けられていて、興味がないことを表しています。急いでいる人が話を続けながらもその場を離れようとするとき、アイコンタクトは取りながらも、体は失礼にならないようにと完全に背を向けることなく、肩越しに会話が終わっていくという場面が想像できるでしょう。あるいは、ベテラン教師がホワイトボードに何かを書いている間、生徒に対して体はほぼ後ろを向けながらも、目は生徒の方を向くことで、生徒は教師がまだ注意を向けているんだというメッセージが感じられるような場合もあります。スリークォーターターンの位置を取ることで、エモーショナルセンターを逸らし、非言語コミュニケーションとしての拒否を意味したり、あるいは目の前で起きている出来事に対して興味がないことを示すこともあります。   では、込み入った話をしている人や、議論を交わしている人を想像してください。ここでのスリークォーターターンは、明らかにコミュニケーションへの興味がなく、そこから離れたいことを表しています。それは、言葉以上に強力なメッセージです。フルバックポジションは、ラインフォーカスを完全に否定しているものです。この場合には、意識が完全に他のところへあることを表しています。 ここで、自然とフルバックポジションになりうる状況を考えてみましょう。プレゼンでパワーポイントの画面に向くプレゼンテーターはどうでしょう。聴衆はプレゼンテーターがその意識を聞き手からスクリーンに向けるということを分かっているので、そこで意識の断絶が起こることはありません。面白いことに、プレゼンにおいてはちょっとフルバックポジションをとった後に、フルフロントポジションまたはスリークォーターターンに戻ることによって、聞き手に対して次に何が話されるかという期待感をもたらすことができます。これをポイントアップといいます。つまりそうすることで、コミュニケーションに強弱をつけることができるのです。 何か重要なことを伝えたいとき、このフルバックポジションからフルフロントポジションやクォーターターンに戻ることは、非言語コミュニケーションとしての効果的な手段だといえます。このフルバックポジションを効果的に使いこなすのは難しいかもしれません。きっと、このテクニックをうまく使いこなしている人をみたことはあまりないかもしれません。あるいは、人前で話すときは「聴衆には決して背を向けないように」と聞いたことがあるかもしれません。それはおそらく健全な教えだと言えるでしょう。…

写し 11 ジェスチャー、アーティキュレーションと思考 パート

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